2020年のオリンピック、パラリンピックが東京に決まり、何かと話題になる中、猪瀬知事の辞任により、東京都知事選挙が行われることとなりました。
細川氏の立候補により、「脱原発」が争点となるようです。私はこの機会に、 「原子力発電」 の是非について、少し、私の考えを申し上げたいと思います。



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東日本大震災による福島第1原子力発電所放射能流出によって、日本中から沸き起こる原発反対の声。
そんな中、経済界からは、原子力発電を止めると日本の産業は今まで通りには立ち行かなくなる、との理由で廃止には反対しています。 

一方で  命あっての物種だ、繁栄はいらない、安全が一番だ、との声もあります。はたして、今の日本で電力を削減することが可能でしょうか。



現在のようなインターネットや、I H 機器の時代に、電力消費量を減らすと、あらゆるところに支障をきたすのではないかと、考えられます。日本の国民がそれでもいいと言うのなら、原発を廃止してもいいとは思いますが、これは、非常に難しい選択を迫られることになります。


命や、安全第一の考え方は大切です。電力が不足すると酷暑の日本でエアコンが使えなくなる。熱中症で亡くなる方も出るでしょう。電力を削減したために、失われる命もたくさんあるのではないでしょうか。 



原発の一基分、100万kWを供給するのに、他の方法ではどれくらいのコストがかかるか、考えてみたいと思います。



風力だと、4000基、琵琶湖の三分の一の面積と、約1兆円の費用が必要です。さらに、風が吹いていない時は止まります。


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太陽光だと、住宅用だけで190万件、費用は6兆円。しかも夜間の電気はつくれません。


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水力で言うと、黒四ダムを含む黒部水系10個のダムを合わせても、100万kWに達しません。このダムを建設するのに要した費用は、天文学的数字です。当然ですが、水が枯渇すると電気はつくれません。



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火力発電は、安定供給の面では原発と同じですが、石油が中東に集中している以上、化石燃料の調達が将来的に困難になります。
もう一つ、CO2の排出量も大きい。しかも、火力発電所を一基作るのに、10年以上の年月がかかります。原発は一基、3000億円位です。CO2を出さないし、安定供給と品質の良い電力が安く得られます。




外国では、どのようになっているのでしょうか。


ヨーロッパのドイツやベルギーは、原発の段階的閉鎖を法律で決定しましたし、イタリアは、国民投票によって原発を抑制する方向に向かっています。それでもしっかりと、国のエネルギーは成り立っていると考えられています。


ところがみなさん、ドイツもベルギーもイタリアも、実は、フランスが原発で作った電力を、送電線を使って買っているということを、ご存知でしたでしょうか。
それだけではなく、スイス、スペイン、そして、イギリスでさえも、海底のパイプラインを利用してフランスから、原発の電力を買っているのです。 結局、原発がなければやっていけないのが現状です。



原発以外の電力で、具体的には、火力、風力、水力、太陽光、地熱、バイオマスを、いろいろな方法を組み合わせて、スマートグリッドでやっていけないのでしょうか。


風力と太陽光をスマートグリッドで組み合わせれば、十分対応できるとの試算もありますが、仮に、その試算が正しいとして、一般家庭はまかなえても、精密な部品を作る工場では、対応できないと考えられます。

風力や太陽光による発電は、風や光の具合によって微妙に電圧が変わるので、いわば、質の悪い電力なんです。日本のように部品や素材、そして製造装置を生産している国にとって、「良質の電力」は不可欠です。



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日本が今、原発を止めても、隣の中国が事故を起こしたら、黄砂に乗って放射性物質が降ってきます。今、中国には13基の原発が稼働しており、さらにこれから27基の原発を建設する計画があります。韓国では20基で、さらに7基の計画があり、日本にとっても、決して安全とは言えません。 (ちなみに日本には、54基ありますが、現在、稼働は0です)



もう一つの大きな問題が、放射性廃棄物(核のゴミ)の処理です。「核のゴミの最終処分場もないのに、原発を進めるのは無責任だ」と言うものです。


宇宙に廃棄する、海底に埋める、と言う事も考えられていますが、これは技術的に不可能と言われています。

現実的には、地層深くに埋める、深層地層処分という方法ですが、現在、世界中で正式に候補地が決定しているのは、米国のユッカマウンテンと、フィンランドのオルキルオト、の二か所のみのようです。イギリスなどは結局処理場が見つからないので、ドラム缶に山積みで地上の仮設処理場保管している、と聞きます。

日本の場合は中間処分という形で、将来の解決策を待つ、という非常に曖昧な状況に居るのが現状です。



今回の東京都知事選挙において、「脱原発」の争点が、このあたりにあると思うのですが、私は基本的に「エネルギー政策は、国民みんなの課題」であり、原発問題は国の政策だと思っています。


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私は、 日本はまだ原発を必要としている、と考えます。

感情論でいくと、日本ではもうこれ以上原発を稼働させるべきではない、との意見に支持が集まると思われます。

しかし、現実論で考えると、原発を止めると、日本全体の国力が下がるのは明白です。

これからも十分な安全対策を講じた上で、原発を動かしていかないと、大変な事になります。なぜなら、原発に変わる電力で、今までどうりに供給させるなら、発電コストが増加して、電気料金が上がります。そうなると工業製品のコストに跳ね返って、価格が上昇して、物が売れなくなります。国際競争力も落ちます。それを避けるためにメーカーは、電気料金の安い海外に、工場をどんどん移転させます。

国内から工場が無くなれば雇用も無くなり、失業者が増え、景気が低迷します。


それでも原発反対を唱える人たちの中には、仮に、この先日本の経済が悪化して、生活水準が落ちてもいいじゃないか、との声もありますが、私は、その考え方は受け入れられません。
貧乏な国でいいとの意見は、今まで豊かすぎたから言えるのであって、やっぱり国は豊かでないと、国民の幸せはありえないと思います。



原発の依存度を、可能なかぎり低減させていくことについては、誰しも依存は無いと思います。


私は、原発の即時廃止、ではなく、国による代替エネルギーへの研究に大きく国費を投入し、世界に先駆けたエネルギー開発を促進することを強く望んでいます。 たとえば、海の潮流を使った発電。このエネルギーは非常に大きいし、無限です。

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その上で、段階的な原発の廃止を進めるのがいいのではないでしょうか。